炭素•窒素安定同位体比に基づくホタル類の食性解析

摘要

近年、宅地造成や農地転用等に伴う土地利用様式の大きな変化によって、水生ホタル類の生息域が消失した事例が報告されている(大場1988)。水生ホタル類の生息域消失の原因を明らかにすることは、それらの生物の保護に必要不可欠である。ゲンジボタル(Luciola cruciate)やヘイケボタル(Luciola Jataraiis)の幼虫は広い食性範囲を持つ。その食性には地域特性があり、生息地ごとに調査する必要がある(古河2011)。しかし自然環境下の採餌行動については摂食行動の観察報告がほとんどである。生物のδ~(13)C,δ~(15)Nは捕食する餌に影響を受ける。経験則ではあるが、δ~(15)Nが平均3.4‰上昇し、δ~(13)Cは平均1‰上昇する(Fry and Sherr 1984,Fry 1988)。δ~(13)C,δ~(15)Nは栄養段階だけではなく、生育した場所の地域特性も反映することが期待できる(Wada et al.1987)。本研究では川名緑地に生息するゲンジボタルとヘイケボタルを対象に、それらの炭素•窒素安定同位体比(以下δ~(13)C,δ~(15)N)から餌生物を推定することを目的とした。