外部市民ファンドの活用と小水力発電ツーリズムの提案: 地域小水力開発の内外の連携に向けて

摘要

小水力発電事業はこれまで地域外部の大手企業の資本が主流であり，地域住民との合意形成のために建設工事のー部を地元企業に請負わせる場合もあるが，発電所の完成後は地域には固定資産税程度しかメリットがなく，外来型の開発は地域経済の循環に結びつかないケースが多い。地域の自然資源である小水力を利用し，地域内で新たな経済効果を生み出すためには，現状の大手企業依存の開発から地域主体の小水力発電事業に転換する必要がある。しかし，地域主体と言っても人口減少や高齢化により地域の人材や保有資金が縮小する状況下で，内発性を過度に重視した小水力発電事業の考えでは地域が混乱し疲弊していくことが懸念される。近年，ネオ内発的発展の概念が議論されるようになっている。これは当該地域を主体としたうえで，地域の利益を高めるために地域能力を向上させ，地元と外部の両方の参加の促進を図るものである。表1に地域外部の大企業による外来型開発，地域が単独で開発する内発的発展，および地域が主体となって地域外の専門家·市民·企業等が協働で開発するネオ内発的発展の特徴の比較を示す。