リチウム硫黄電池の研究開発: 安価な高エネルギー密度電池の実現を目指して

摘要

リチウムイオン電池が小型民生用として巿場に登場して約25年経過し，現在では移動体用や大型の蓄電システム用の電源としての適用が進んでいる。これらのアプリケーションの拡大のためリチウムイオン電池はさらなる高性能化と低コスト化が求められている。特に移動体用として，(国研)新エネルギー•産業技術総合開発機構(NEDO)から提示された蓄電池開発のロードマップ(ロードマップ2013)では，純電気自動車を普通乗用車並みに普及させるためには，2030年を目途としてエネルギー密度をパックレベルで500Wh kg~(-1)まで高める必要があると示されている。またさらにコストを現状の3分の1から6分の1とすることも同時に提言されており，両者の同時達成のために多くの機関が新しい電池系の開発に取り組んでいる。この新しい電池系の有力な候補の一つがリチウム硫黄電池である。本論文ではこの電池系の課題とそれに対する研究開発の方向性を紹介する。