竜巻による飛来物の合理的な速度評価法と防護対策

摘要

原子力発電所の新規制基準では，設計·運転で考慮すべき自然現象として，竜巻が新たに設定され，竜巻に対する影響評価が求められている。原子力規制委員会が制定した竜巻影響評価ガイド(以下，NRA評価ガイドでは，基準竜巻速度の評価方針が示されているが，竜巻飛来物の設計速度に関しては，巨大竜巻が発生する米国の基準値を超える大きな値が例示されている。このため，このような高速飛来物から既存施設を防護する対策工の設置や衝突時における施設の構造健全性評価法の開発が喫緊の課題となっていた。また，NRA評価ガイドで例示されている設計飛来物速度は，海外の基準と比較して大きな保守性を有する評価法にもとづいているため，より科学的かつ合理的な竜巻飛来物速度の評価法の構築が必要とされていた。当研究所では，風工学·流体力学·構造工学の幅広い専門知識とこれまでの実務的知見を活用して，これらの課題を解決するための研究開発に取り組んできた。