性能設計化地層処分技術への期待

摘要

本稿では，原子力発電における使用済核廃棄の地層処分技術を取り上げる。わが国においては，1963年の東海発電所の稼動開始以降，16箇所の原子力発電所において48基の原子炉が運用されるまでに至っている。現在，これらの原子炉は運転停止か点検中にあるが，今後，原子力発電から脱却しようが，継続縮小/拡大発展しようが，これまでにたまった使用済み燃料の処分を含め，放射性廃棄物処分は避けては通れない喫緊の課題となっている。原子力発電所およびその燃料サイクルシステムから排出される放射性廃棄物は，低レベル放射性廃棄物と高レベル放射性廃棄物に大別され，それぞれの特性に応じた処分方法が適用される。高レベル放射性廃棄物に対しては，数10万年オーダーもの超長期にわたって生態系や周辺環境に影響を及ぼさない隔離を保障する技術が求められている。現在のところTRU廃棄物も含めて，300m以深への地層処分が考えられており，その技術開発と実用化への努力が精力的に行われている。しかしながら，一方で実現性を疑う論調もある。本稿では，その地層処分技術のイノべーションをさらに惹起し，現実の問題解決を図る手立てを考えてみたい。同時に，それがわが国の国際貢献と新規市場開拓につながっていることを論じてみたい。