放線菌においてジアゾ基の生合成を担う亜硝酸生合成経路

摘要

ジアゾ基を有する天然物は自然界から複数単離されており、それらの多くは放線菌由来である。その数は決して多くはないが、抗菌活性や細胞毒性を持つものが報告されており、その作用機序にはジアゾ基の脱離を介した活性化が重要であると考えられている。ジアゾ基を有する化合物の生合成に関してはkina-mycinを対象とした研究が最も古い。しかし、生合成遺伝子クラスターの全長が明らかになっていなかったため、ジアゾ基の生合成機構は不明であった。また、azameroneの生合成研究を通して、ジアゾ基の窒素のうち、遠位のものは硝酸もしくは亜硝酸に由来することが示唆されていたが、その供給源や生合成酵素に関する知見はなかった。このように筆者らが研究を開始した当時、ジアゾ基の生合成機構はほとんどわかっていなかった。そこで、筆者らは、ジアゾ基を持つ化合物の中でも比較的構造が単純であり、生合成経路の予測が容易であったcremeomycinに着目した。