自動運転走行システムと刑事法の関係

摘要

内閣府は，20ほ年5月21日に発表した「戦略的イノベーション創造プログラム（SIP)」の研究開発計画のひとつに「自動走行システム」を掲げた.これは2013年6月7日に閣議決定された「科学技術イノベーション総合戦略」の中で国家目標とした「2018年を目途に交通事故死傷者を2500人以下とし，2020年までに世界で最も安全な道路交通社会を実現し，交通渋滞を大幅に削減する」という内容を踏襲したものであった.この研究開発計画による自動走行システムは「安全運転支援システム」から「自動走行システム」へと，「レベル1」から「レベル4」まで4段階に分類されている.「レベル1」は加速•操舵•制動のいずれかを自動車が行う状態，「レベル2」は加速•操舵•制動のうち複数の操作を自動車が行う状態，「レベル3」はそのすベてを自動車が行い緊急時のみドライバが対応する状態，そして「レベル4」は加速•操舵•制動にドライバがまつたく関与しない状態をいう（内閣府SIP自動走行システム研究計画書P.1-9より）.この自動走行が，「レベル3」の段階になると，もはや運転者の役割はほとんどなくなり「レベル4」に至っては無人運転ともいえる状態となり，「自動車を運転する」という概念そのものが存在意義を失ってしまうことになる.%The introduction of an automatic driving system raise a question about legal responsibility. When automatic driving progresses, the responsibility of the drivers is reduced. In place of drivers, the responsibility main constituent is demanded from a designer and a manufacturer, and the defect of the safety management system becomes the grounds of the responsibility.