スイス国立博物館

摘要

1898年に開館したスイス国立博物館は、1848年に独立を宣言した新興国家のモニュメントとして建設された。新しいスイス連邦の内部に集積する様々な時代や地域のコラージュのように、この建築は教会やブルジョア、貴族の建築の異なる様式や、引用、イメージが全体の中に統合されており、教会、宮殿および城門の集合体となっている。それから1世紀あまりが経って、元の配置は時代遲れになり、博物館の用途をなさなくなった。クリスト•アンド•ガンテンバインはこの增築計画の国際コンペに勝利した。彼らは介入する範囲を、公園内の新しいヴォリュームで既存のU字形の建物を閉じるかたちに絞り、博物綰内の新しい通路を提案した。延長される翼と大きな橋としての增築の提案は、元来の「集合体」という原則を意識しており、理念的な建築にはとらわれない。折り紙のような增築部分の屋根の起伏は、既存の建物の急勾配の切妻屋根を明らかに踏襲している。また躯体に沿う壁は内部空間をかたちづくり、結果としてできた形状がそのまま博物館の各部屋の実際のかたちとなる。このように屋根の起伏は内部にもそのまま現れており、階段が橋の役目を果たしている。この壁で囲まれた建築は、壁の厚みに至るまで既存の建物を再解釈している。增築部分の二重壁は、現代の省エネルギー基準を满たすことで19世紀のそれと同じ厚みになっている。露出した設備部分は、硬質骨材を加えたコンクリート壁と、山を(貧)くトンネルのように壁にあけられた孔によって引き立てられている。内部は主にコンクリートが用いられているが、吊り天井の金属格子などの工業製品と組み合わせて、この堅牢な博物館を展示場のように扱っている。增築計画の前に、既存の博物館を現在の耐震および防火基準に適合させる必要があった。これは、石をこの建築の根源的な材料として際立たせるきっかけとなった。空洞のシェルを覆うファサードと空間の真ん中にある柱だけを残して博物館の床が剥がされた。新しいアーチや床はすべてコンクリートを打っており、既存のものと似ているが様々な型枠と表面仕上げを用いている。現場打ちのコンクリートのアーチは木製型枠を用い、床は研磨仕上げのコンクリート、壁は無塗装のセメント仕上げとなっている。改修の第1段階(その後、2つの延長翼の改装が行われた)は迅速に実現されたが、それと比べると、增築部分の工事はコンペに勝利してから10年経ち、チューリッヒ市民の賛成票を得てようやく始まったばかりだ。