民俗学における「普通の暮らし」: 岩本通弥•前日本民俗学会長に聞く

摘要

大月本日はお忙しいところ、お越しいただきましてありがとうございます。今号の特集は「集合住宅の『普通の慕らし』——東アジア6都市の比較」です。最初に篠原先生から企画意図をお願いします。篠原今回の号で取り上げた他の5都市に比べると東京はまだまだ戸建て住宅が多いのですが、他の5都市では戸建て住宅は極めて少なく、集合住宅の暮らしが一般的です。でも、それは最近のことで、100年前はもちろん、集合住宅がスタンダードであったわけではありません。集合住宅へのシフトは都市の急激な人口流入とそれに伴うスラム化に対して、それを整理して近代を受容する政策であったと言えます。しかし、それらは、外見こそよく似た集合住宅ですが、生活はすごく違い異なる「普通」が内包されていました。私自身、ソウルや台北のいくつかの集合住宅を調査してそう思いました。近代の住の器である集合住宅を橫並びにすることで異なる「普通」がクローズアップされるのではないか、言い換えれば、「普通」がいかに「普通」でないか見えてくるのではないか、というのが今回の企画趣旨です。