時間概念と未来の歴史

摘要

未来を想像することは、時間の概念と関係している。例えば、古代エジプトは3000年という長いスケールで存続していたが、あまり大きな変化が起きていない。われわれから見ると、時間が止まっているかのようだ。10年や100年のスパンで流行が切り替わることなく、永遠の現在と言うべき時間が流れていたのだろう。中世においては、最後の審判へと向かうキリスト教的な一直線の時間概念が支配的だった。また、ゴシックの大聖堂は、100年を超える建設期間もめずらしくない。今着工したプロジェクトが、幾らかの様式の変化は伴いつつも、自分の死後に完成するという感覚である。ルネサンスは技術革新を経験したが、単純に未来を引き寄せるわけではなく、理想化した古代の再生という意識を持っていた。19世紀のイギリスにおいてゴシック·リバイバルの旗手となつたピュージンは、その著作『対比』でひどい状況の現在を批判し、中世を理想化していた。つまり、よりよい未来ではなく、失われた輝かしい過去に目を向けている。