煉瓦: 『農商務統計表』ほか

摘要

前回までは、日本近代の建設産業全体の動態把握という観点から、建設投資額推計とその元資料の一部となった『東京市統計年表』を取り上げた。今回以降は見方を変えて、建設投資額と相関関係が想定される、建設諸材料の生産量について、一品目ずつ取り上げてみることとする。最初に、近代化、西洋化の象徴でもあった煉瓦(普通煉瓦)について、諸統計資料から、その生産量の推移を見てみよう。根拠となる統計は、『農商務統計表』であり、煉瓦については1905(明治38)年から1923(大正12)年まで掲載されている。1924年以降は『商工省統計表』に引き継がれたが、1926年以降は掲載されなくなる。これとは別に『工場統計表』にも、1919年以降、煉瓦の生産量が掲載されているが、こちらは職工5人以上の工場が対象となっており、悉皆調查である『農商務統計表』ならびに『商ェ省統計表』の数量と連結させることはできない。