現代都市のカンくナンス:公共性はいかに可能か

摘要

——現代の都市を考える今号の特集で、齋藤先生には特に都 市のガバナンスゃあるべき公共性についてお話を伺いたいと 思っています。（小泉）まず、世界中の都市において、社会的•経済的不平等が 広がっているという問題があります。それはジニ係数や貧 困率といったデータに表れていますし、実際の空間にも反映 されてきています。地域間ではなく、ひとつの都市の内部で 起きているのです。賈ぃ物や食事など物的な意味でも、教 育環境やその機会へのアクセスという意味でも、あらゆるラ ィフシーンにおいて「隔たり」が蔓延しています。アメリカの政治学者ロバ一ト•D•パットナムは『われらの子ども——米国における機会格差の拡大』（創元社、2017)で、アメリカの 八つの都市、例えば、彼が育った「ラストベルト」のオハイオ 州ポートクリントン、フィラデルフィア、アトランタ、カリフォルニ ァ州オレンジ郡などで、上層と下層の典型的な家族にインタビューを行っています。原著の副題は「The American Dream in CrisisJですが、この60年間でアメリカンドリーム は崩壊し、上昇移動ができなくなり、下層の人々が閉塞感を 抱く絶望的な未来が描かれています。インタビューだけでは なく、統計データによって実証的にも確かあられ、一般化さ れています。日本はまだそこまで目に見えるかたちにはなつ ていませんが、アメリカと同じく 「分け隔て」が進行してい ます。