戦災の記念から阪神·淡路大震災の記念へ

摘要

神戸というまちはわかりやすいイメージを持ちながら極め て複雑な実態を有している。近代化とともに歩んできた開港150年の都市としてよく知られているが、第二次世界大戦 による甚大な空襲被害と戦災復興に始まった戦後と、それか ら50年後の1995年に兵庫県南部地震によって生じた阪 神•淡路大震災との関係性をとらえるまなざいよ、十分に共 有されていない。それほどまでに、視覚的な環境の構成要 素の損失はそこに暮らす人々の記憶を剥ぎ取り、奪ってしま う。戦後神戸の記憶喪失を和らげる手立てのひとつは、戦 災と震災の復興プロセスを連続的に解することではないだろ うか。この視座から、ここでは戦災•震災後の公共空間に 託された記念の構想と表現について紹介したい。