六つの格差から見る建築計画と住宅行政のゆくえ

摘要

本座談会では、建築計画系の様々な分野で住まいに関連した研究を行う若手研究者が集まり、六つの格差に関する論考をレビューを行う。本特集の編集委員らは、座談会の円滑な進行のために議論を重ね、3×3のマトリクスを提案した。具体的には、六つの格差の現状について、平山が言及する階層性から着想を得て、「持ち家、民間賃貸、公的賃貸」を縦軸に、居住することで得られるケアの種類「自助、共助、公助」を横軸に設定し、居住地域ごとに整理を試みた。1.「地方/過疎地」については、強かった共助が人口減少•高齢化に伴い弱体化している。それを補う取組みとして、中井は公助による補完(定住自立圈構想)の可能性を紹介している。一方、石垣は、共助力、また民間賃貸、公的賃貸などのストックを活かした地域持続(学校存続)の事例を紹介している。2.「再建期の被災地」については、共助の強かった地域から自助に重心を移さざるをえない避難や復興事業等に伴うコミュ二ティの分断が課題となる。高所得者層を中心とした災害公営住宅から持ち家や民間賃貸への流出という格差、孤立化•孤立死が課題となるなか、佃は災害公営住宅の果たす役割を制度的、建築計画的に問い直す必要性を示している。3.「都市部(生活弱者)」について、葛西は公的ケア(住宅、育児など)の不足から、自助による(低廉な)民間賃貸への居住を選択せざるを得ない実態を指摘し、共助を含めたより複合的な居住支援の必要性を示している。4.「郊外住宅地」では高齢化•人口減少に伴う自助·共助力の低下が課題となる。梅本は外部団体により地域の自助•共助を補完する活動の重要性、またその際に空き家(民間貢貸など)活用の可能性を示している。