常識•正統からの解放——思慮深きリアリスト

摘要

ロダンの彫刻「考える人」は、膝に肘を付きじつと考え続けていて動かない。考え、模索し、絵を描き、設計をして建築をつくり、社会に対して行動を起こす石山修武は、やはり「考える人」だ。それを確信したのは、あるセミナーの打ち合わせでのこと。聞き手となった僕は、「幻庵」を中心とした講話構成によるセミナーにしたいと頼み、タイトルをどうしょうかと問いかけたときだった。石山はじつと考え続ける。固唾を呑んで見守った僕と同席した担当者にボソッとつぷやいたのは、「幻庵をつくらせたもの」。それだ！と思つた一瞬、間が空いた。2年半前のことである。セミナーから2週間後、僕は三十数人の見学者を率いて、愛知県の山林にある幻庵を訪ねた。