第39回公開講演会のご案内

摘要

経済の発展は様々な産業の展開によってもたらされるが，機械を備えた大規模な製造業の登場が，工業化の開始（いわゆる産業革命）であった．それ以後，とくに重化学工業を中心とする第二次産業革命を経て工業化は深化していくが，その過程で前工業化期には見られなかった貧困問題，労働問題，環境問題などが生じて社会は大きく変貌し，脱工業化の中でそれはさらに変わっていく．講演では日本を主な素材として，産業の発展と社会の変化について考察する．対象とする時期は第二次世界大戦後，20世紀末までの50数年間である．その間にはコンピュータ，原子力，生命科学をはじめ多数の産業がめざましい発展を遂げ，人々の生活はまことに快適なものになっていったが，その反面で多数の仕事が不要になって職を脅かされる人が増え，また最近の原発事故にみられるように生命の危険に関わる災害も起こるようになった．人間が，産業発展の成果を享受するだけではなく，その代償にも常に気配りをしなければいけない時代は今回考察する時期に本格的に始まったといえよう．