1.金銀糸の中の「ラメ糸」

摘要

筆者は，「ラメ糸」を専門に製造するメーカーに勤務する営業職である.テキスタイル製品の製造メーカー，販売店，研究者など様々な人と会話するうちに，このラメ糸というものがいかに，詳細が不明のまま繊維業界内で扱われているのかを実感するようになってきた.ラメ糸は装飾品だが，宝石や王冠のように単独で身にまとうものではなく，織り糸や編み糸としてテキスタイル製造の初めから組み込まれてしまう，一部の素材である.内容不明のまま扱われることは，品質やビジュアルに大きく影響する問題(変色•脱色など)に繋がることである.実際にラメ糸を使用する上で，この素材の理解不足を起因とする様々なトラブルが日々発生している.筆者が勉強不足ゆえに表現や説明が未熟なことが心苦しいが，このラメ糸という素材を，自社の利益の範疇を超えて，繊維業界の皆にとっての利益になるように出来る限り公平に分かりやすく，共通の理解を持てるように書き表したいと考える.