天然素材のアンモニア消臭性:家庭科教育の教材としての利用

摘要

嗅覚を刺激するにおいを表現することばには 「匂」と「臭」がある.「匂」はかおりや香気を意 味し，さらには色合いや色艷の良さ，生き生きと した美しさや華やかさを表現することもある.こ れに対し，「臭」はくさいかおりや臭気など，好ま しくないにおいに使われることが多い.そして， はっきりと嫌な臭いや不快な臭いとして感じられ るにおいは「悪臭」と表される.私たちの生活の 中には悪臭と呼ばれる多くの臭いがある.例えば， 体臭，調理臭，生ごみ臭，糞尿臭，建材臭，たば こ臭，ペット臭，カビ臭等が挙げられるだろう.近年，繊維製品の臭いについての関心が高くな つている.これにつれて，新しい消臭技術や製品 が次々と開発されるようになった.酸化チタンな どのナノ粒子を利用した消臭剤や官能基を利用 した電子線グラフト重合技術による消臭加工技 術, くえん酸処理布を利用した消臭加工などが 挙げられる.こうした消臭技術が注目されている のは，より快適な生活を送りたいと願うことが背 景にあるからであろう.しかし，個人の快適な生 活を保っために過剰な使い方をする場合も考えら れる.臭いの問題は環境への負荷と併せて考えて いく必要があるのではないだろうか.こうした観 点から，古くから知られている茶がらや茶の実な どの植物による脱臭効果をはじめ，植物抽出物に よるアンモニア消臭は有用な方法であるといえよ う.その原理は植物に含まれるタンニンなどがもつ0H基と，臭い成分がもつNH基の化学反応によ る消臭であると考えられている.古くから受け 継がれてきた方法は廃物利用を念頭においたものが多く，見習うべき点も多い.