現状の気候・エネルギー政策を考慮した，パリ協定国別貢献における国際競争力に関する分析

摘要

NDCsのマクロ経済影響を評価すると，比較的野心的な目標を掲げる先進国では，特にエネルギー多消費産業の生産に負の影響を与えると推計された．政策による削減強度に国際的な大きな差異が生じると，国際貿易を通じて炭素リーケージが誘発され，世界全体での排出削減の実効性が著しく小さくなる危険性があり，大きな懸念事項と考えられる．一方，いくつかの途上国では，NDCsを達成する際の炭素価格がほとhどゼロであり，特段の温暖化政策がなくてもNDCsの達成が可能であることを示している．途上国における経済への悪影響は小さく，むしろリーケージとして生産シフトにより生産が増加する場合も推計された．また，世界で均一化された削減強度の政策においては，エネルギー多消費産業へコスト影響はわずかな大きさにとどまる可能性が大きいことが示された.