工学院大学125周年記念総合教育棟

摘要

そもそも大学の空間の本質とは何か、その根源的な問いと、キャンパス全体の都市計画的視点で敷地の可能性を探ることが検討の原動力のすべてだったと言ってもよい。だが当初は、敷地を公共的広場と見立てる案が続いた。広場にパビリオン状に建てる案①、屋上をすベて広場にする低層案②、中庭として広場を囲う案③。だが検討を進めるうちに、敷地をひとつの広場と捉えるではなく、むしろ敷地の四隅がキャンパスの将来に向けて意味ある場所だということに気づき、四隅を広場とする案が出てきた④。しかし教室同士の関係性は従前通りだ。どうしたものかと思案した挙句に、片廊下型の建築を背中合わせにすればよいのだと思いついた⑤。どこにでもあるありふれた建築が、ふとした関係性によって突如として新しい空間として鮮やかに浮かび上がる、この瞬間はまるで新しい世界との出会いのようでもある。