九州大学50 周年記念講堂の意匠に見る光吉健次の設計理念

摘要

第一に、記念講堂は、当時の都市環境への光吉の批判的認識に基づく「人間の主体的立場の回復」の理念を素直に具現化したもので、人々の交通・交流の場のネットワークである「C・S」の空間概念を導入することにより、人々の交流のたまりとして設計された。第二に、光吉は中央と地方の格差への意識を持っており、新しい技術であったプレストレストコンクリートの導入を技術格差を解消する試みとして、試行錯誤の段階で工夫を凝らした記念講堂を文化格差への対処の姿勢が表れたものとして捉えることができる。