平成28年(2016年)熊本地震における南阿蘇鉄道犀角山トンネルの被害について

摘要

平成28年4月に発生した熊本地震では構造物の損傷，斜面崩壊などの被害が多数発生した．南阿蘇鉄道高森線においても立野駅から中松駅間で施設の被害が多く発生し，特に白川右岸では斜面崩壊，トンネルや橋りょうの損傷の程度が大きかった．この内，白川右岸の犀角山トンネルが位置する犀角山は安山岩質の溶岩からなり，岩塊としては比較的堅硬だが，開口した割れ目が非常に多く，弾性波速度はトンネル底盤下まで1km/s程度であった．犀角山トンネルでは出口方約40m地点で最大490mmの右横ずれの変位が生じ，その付近で覆工の損傷が著しかった．この損傷は断層運動によるものと考えられ，今回の地震によるトンネルの損傷は地山強度が全体に著しく低いものの局所的であったといえる．