鋼構造物に発生した疲労き裂の効率的な検出手法の検討

摘要

（抄録）高度成長期に建設された，社会インフラ及び産業インフラの保守，保全が大きな負担となってきている.橋梁等の鋼構造物では，主要な劣化及び損傷要因は疲労及び腐食と言われている.筆者らが保全に携わっている製鉄所でも，使用頻度の高い天井クレーン及びその付帯設備に発生する疲労き裂の効率的な検出が課題となっている.特に，クレーンの走行レールが設置される構造部材であるランウェイガーダは，疲労き裂の調査に多くの時間を要するため，スクリーニング手法の早急な確立が望まれている.そこで，本研究では，ランウイエイガーダの三角リブ下に発生した疲労き裂を対象に，効率的なスクリーニング手法を検討した.これまでに，熱弾性効果を用いた疲労き裂の検査法が提案されている.しかし，き裂の形状が把握できず，き裂の長さが測定できない場合があった.そのため，観察面の放射率分布から，疲労き裂を検出する方法を新たに提案した.さらに，測定したデータから効率的にき裂を検出するため，深層学習技術の適用も検討した.実際に製鉄所のランウェイガーダで提案手法を評価したところ，10cm以上の疲労き裂を検出できる能力を有していることがゎかつた.今後は，提案した手法の適用範囲を拡大するため，10cmより短い疲労き裂に対しても安定して検出できる方法を検討するとともに，三角リブ下以外の部位に発生した疲労き裂に対して技術の適用性を検証する予定である.