パラボラ集音マイクロホンと合成波形分離法による複数クーリングタヮー減速機の高効率状態監視·診断法

摘要

水産加工施設，製鉄所，石油·化学プラントなどの生産現場では多くの機械設備が生産効率の維持とメンテナンスコストの削減のために稼働限界まで使用されている.機械設備は以下の環境下で縛られている特徴がある.重荷重，腐食，摩耗などの高ストレス環境，24時間連続稼働などである.使用期間が長期に及ぶにつれ機械設備の性能が低下するため，それに伴い生産効率や品質も低下する.これらは，電気ェネルギーの消費量の増加を招き，ランニングコストを増加させるため，製造ライン全体の生産効率低下を助長させる原因となる.性能が低下した状態での操業は品質の低い製品の製造に繋がり，莫大な損失を出す可能性が考えられる.これらのリスクを下げる為に適切なメンテナンスを適切な時期に行う必要がある.高精度な状態監視·診断を行うためには各種機械設備にセンサを取り付けることによりSN比の向上が望める.複数のセンサを取り付けることで他の機械設備から発生した振動成分を取り除くことが可能となり，状態監視対象の周波数成分のみを抽出することができる.しかし，センサ数の増加とともにセンサ自体のコストと信号処理のコストも增加してしまい経済的に負担が大きくなる.本研究では特定の方向に対して集音効果の優れたパラバラ集音マイクロホン（以下，パラボラマイクと略）で得られた音圧波形に特定の信号処理法を施すことで高効率な状態監視·診断を実現する手法を提案している.具体的な方法としては，パラボラマイクの集音特性により得られる回転周波成分の強度差を利用することで状態監視対象のみから発生した回転周波成分を同定している.さらに音源同定後に提案する合成波形分離法を施すことにより，状態監視対象のみから発生した波形のみを抽出することが可能となっている.今回，化学プラント工場内に設置してある入力軸力30[kW]の実機クーリングタワー減速機2台に本手法を適用し，その実用性を検証している.