腕到達運動学習時における冗長な筋骨格系の制御

摘要

ヒトは状況に応じて素早く運動を修正し，適切な運動を生成することができる．例えば，的に向かって投げたボールが的から外れた時，次の投球時には的とボールとの誤差を減らすように手先の軌道を修正する．これまで，腕到達運動などの運動課題を用いて，新奇な環境での運動学習中に手先の軌道や力を計測することで，ヒトの運動学習について調べられてきた（Shadmehr andMussa-Ivaldi, 1994;Scheidt et al.,2000;Smithet al., 2006;Singet al. 2009）．しかし，こうした手先の運動は本来，肩・肘・手関節といった多関節の複雑な回転運動を組み合わせた結果として生み出されているため，手先の運動を修正するには関与する各関節の運動を修正しなければならない．そのため，手先の運動の修正量だけではなく，各関節における運動の修正量について明らかにすることは，ヒトの運動学習を理解する上で必要である．また，効率的なトレーニング・リハビリテーション方法について検討していく上でも，関節レベルで運動を捉えることは重要である．