熱履歴付与による橋梁用高降伏点鋼の材料特性変化に関する研究

摘要

鋼橋の火災を想定した熱履歴が橋梁用高降伏点鋼の材料特性に及ぼす影響を明らかにするため，一連の実験を実施した．得られた知見を以下に示す．（1）SBHS400 およびSBHS500 を900℃ に加熱後空冷した場合，加熱なしの場合と比べ，シャルピー吸収エネルギーがそれぞれ約7%，約26%増加した．降伏応力はSBHS400 では約32%，SBHS500 では約40%低下した．引張強度はSBHS400 では約17%，SBHS500 では約30%低下した．（2）SBHS400 およびSBHS500 を900℃ に加熱後水冷した場合，加熱なしの場合と比べ，シャルピー吸収エネルギーがそれぞれ約8%，約44%減少した．降伏応力はSBHS400 では約8%，SBHS500 では約23%低下した．引張強度はSBHS400 では約17%，SBHS500 では約2%上昇した．（3）SBHS400 およびSBHS500 を600℃ に加熱後冷却した場合，空冷，水冷のいずれの冷却条件においても材料特性は加熱なしの場合と比べほぼ変わらなかった．SBHS400 やSBHS500 を用いた鋼橋が火災を受けた場合も，材料特性変化の調査の要否を判断する受熱温度の基準は一般鋼材の場合と同じとして問題ないと考えられる．