複雑境界の解析のために１プロセスに複数立方体領域を割り当てる並列計算法

摘要

巨石の運動や衝撃力を適切に推定できる解析法の構築が土石流対策において求められている．著者らは既往の研究1),2)において，小球を重ねて作った石礫形状粒子をLagrange 的に，その周りの水の流れを，粒子よりも小さな直交計算格子を用いてEuler 的に解析するInterface-resolved large eddy simulation (IRLES)の解析法を構築し，この手法で高濃度土砂流の運動を適切に説明できることを示してきた．しかしIRLES は計算負荷が大きくこのことが現地を対象とした解析の妨げとなってきた．多量の粒子群の運動解析に関して，直方体領域内の粒子群の解析を対象とした動的負荷分散3)などの研究例は多い．しかし，現地土石流のIRLES の実現のためには，複雑境界形状に適した並列化法を構築することがより重要になると考えられる．著者らがこれまでに構築したIRLES の並列化方法では，複雑境界形状のみを計算領域とすることができず直方体領域全体を対象とせざるを得ない並列計算法であった．以降この並列化法を直方体法とぶ．また，任意の領域を指定して計算できる並列計算法を任意形状法とよぶ．本研究ではIRLESに適した新しい任意形状法を構築した．構築したプログラムはMPI とOpenMP のハイブリド計算であるが，本稿ではMPI のプロセス並列部分について説明する．この手法は，対象領域を複数の立方体ブロックに分割し，1 プロセスに複数のブロックの計算を担当させるものである．本稿ではこの並列計算法を説明し，また著者らの従来の直方体法の並列化法との計算速度の比較等を行い構築した任意形状法の並列化法の有効性を示す．