700℃級A-USC蒸気タービン開発

摘要

エネルギー需給バランスの観点から、石炭火力の高効率化技術開発は地球温暖化の問題を軽減するために大変重要な役割にある．世界的にCO_2削減にむけて再生可能エネルギーの利用が増加している一方、発展途上国の急峻な経済発展に伴い、再生可能エネルギーのみで電力を賄いきれない課題もあり、長時間にわたって安定した電力を供給してきた石炭火力の高効率化ニーズは高い．図1に石炭火力プラントの蒸気条件の変遷について示す．石炭火力の蒸気条件は、亜臨界圧、超臨界圧、そして 600℃級超々臨界圧発電（USC）と経てきた．これら各年代で採用された最高の蒸気条件は、時代ごとに発展してきた蒸気タービンの高効率化技術との相乗効果を伴い、プラント全体の高効率化に寄与している．近年では、さらなる蒸気条件向上を狙い600℃級USCから温度を100℃あげた700℃級A-USC（Advanced Ultra Super Critical）の開発が計画されている．本開発は、欧米のみならず中国、インド等世界的に高まってきている．A-USC が実現できれば、タービン効率は 50%を超え、プラント効率も46%HHV以上が見込まれる．またCO2削減量は世界平均値から20%～30%削減される報告もある．日本では、2008年より経済産業省の補助事業として国プロによる開発が進められてきた．700℃級A-USCタービンを可能にするには、材料や製造に関する技術ブレイクスルーが必要になる．そのため、700℃10万時間で100MPa以上の高温クリープ強度を持ち、10トン以上の大型鍛造ロータを製造可能とする新たなNi基材料の開発を行った．また、Ni基と高Cr鋼の異材溶接ロータ製造技術も開発した．これら開発技術を検証するため、最終的に、700℃以上の温度場で異材溶接ロータを持つ蒸気タービンを3600rpmで回転するタービン回転試験を行った．以下、本論では、これら開発内容について詳述する．