混合冷媒を用いたエジェクタサイクルのシミュレーション解析

摘要

近年，産業の発展や人口増加によってエネルギー需要が増えている．この需要の増加は，化石燃料の消費に加え，二酸化炭素の排出増加を加速させる．特に，冷暖房に使われるエネルギーは，日本のエネルギー消費量のうち約3割を占めている．冷暖房機の高性能化や未利用エネルギーの有効利用によってエネルギー消費量を抑えるというのが冷凍空調分野における現在の課題である．未利用エネルギーの中でも，特に低温域の排熱を利用する冷凍サイクルは，吸着サイクルやデシカントサイクル，エジェクタサイクルなどがある．エジェクタサイクルは低温熱を利用して冷凍サイクル，ヒートポンプに加え，熱機関としても利用できるシステムである．しかし，単一冷媒を使用したエジェクタサイクル（ERC）は，従来の蒸気圧縮冷凍サイクルに比べてCOPが低い．そこで，混合冷媒を用いたエジェクタサイクル（BERC）が提案されている．熱源と熱交換をする作動流体と，外部と熱のやり取りをする冷媒で異なる媒体を使用することで ERC よりも高効率化できると考えられている．しかし， ERCと同様に，最適な動作環境を維持するのが難しいといった課題がある．本研究では，エジェクタの性能に関わる質量流量比を計算し，動作環境との関係についてシミュレーションし，ERCとBERCの性能を比較した．