高圧メタンガスへの微量水銀溶解度測定と状態方程式による推算

摘要

坑井を通じて地下から産出される天然ガスや原油中には極微少量の水銀が含まれている場合があり，油ガス田開発?生産などにおいて操業上および環境上の問題を引き起こすことが知られている.例えば天然ガスを111.15K(-162°C)に冷却して液化天然ガス(LNG: Liquefied Natural Gas)を製造する際に，天然ガスに含まれる水銀が熱交換器のアルミニウム部分でアマルガムを形成し，さらに水との逐次反応により腐食を起こすことが知られている.この反応機構は，1973年のアルジェリア?スキクダLNGプラント事故[1]で明らかになり，今日ではLNG製造の際には天然ガス中の水銀除去が必須のプロセスとなっている.天然ガスや原油に含まれる水銀の除去は，金属硫化物担持アルミナや活性炭などの吸収材?吸着剤を充填した水銀除去塔(MRU: Mercury Removal Unit)によって行われる.生産プラントの設計段階においては，MRUのフィード流体中の水銀濃度を正確に予測することか，MRUの仕様を最適化するために重要な情報となる.また，生産ブラントからの水銀の放出や，メンテナンス時の作業員の水銀暴露のリスクを見積もるためにも，生産プラント全体での水銀分配を予測する技術が求められている.