高分子基織物複合材料の振動減衰解析

摘要

高分子材料を母材とする繊維強化プラスチック（FRP）は，優れた振動減衰性能を有するため，振動特性に関する研究も行われてきた．ただ，その多くは一方向繊維強化複合材料に関するものであり，織物複合材料に関する研究報告はほとんど行われていないのが現状である．これは，複雑な織り構造を有するため，単純な曲げ変形時にも内部では多軸応力場となり，エネルギの消散現象である減衰特性評価を困難にしているためであると考えられる．すなわち，一方向強化材のような巨視的な取り扱いでは，繊維束の織り構造に起因するエネルギ消散を模擬することは困難であると考える．そのため，織物複合材料の減衰特性については，理論や数値シミュレーションによる評価法に関する研究はほとんど行われていないのではないだろうか．このような背景から，著者は織物複合材料の振動減衰モデルをひずみエネルギ理論と有限要素法に基づき定式化し，平織物複合材料を対象として有限要素解析を実施し，振動試験により提案手法の有効性を示してきた．