Cr_2O_3-Pb_2Ru_2O_(7-δ)コアシェル助触媒を用いた水の可視光分解

摘要

太陽光は地球上に半永久的に照射されるため，化石燃料に替わるエネルギー源としての利用が期待されている。光触媒への可視光照射による水の分解は，太陽光のエネルギーを水素という化学エネルギーに変換し保存できる方法の一つである。助触媒を担持した可視光応答型光触媒を利用した人工光合成に関する研究が長年行われてきたが，2005 年に堂免らによって， GaN:ZnO 固溶体が500 nm 付近までの可視光を吸収する事が可能であり，助触媒として，RuO_2 を担持することによって，水を分解し水素と酸素を生成可能であることが見出された。その後，水の光分解の活性向上のために，助触媒として，貴金属Rh をCr_2O_3で被覆することにより水素·酸素の再結合を抑制したCr_2O_3/Rh コアシェル助触媒やRh やCr を含む複合酸化物が用いられてきたが，この方法では貴金属が用いられており，実用化を考えると高コストであるため，より安価な貴金属代替助触媒の開発が求められている。当研究室ではこれまでに，Pb_2Ru_2O_(7-δ) が高いプロトン還元触媒能および水の酸化触媒能を有することを報告してきた。Pb_2Ru_2O_(7-δ) はRh 等の貴金属と比較して安価であるため，低コストで高い活性を示す助触媒として機能する可能性が期待される。本研究では，Pb_2Ru_2O_(7-δ) を可視光応答型光触媒GaN:ZnO 上に担持し，光析出法によりCr_2O_3 シェルを被覆し可視光照射による水の分解を行うことを目的とした。