誘電泳動法によるCNT バンドルの選択的修飾

摘要

カーボンナノチューブ(CNT)は、グラフェンシートが丸まり円筒状構造をもち、シートが1 層からなる単層カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nanotube: SW-CNT)と、複数の層からなる多層カーボンナノチューブ(Multi-walled Carbon Nanotube: MW-CNT)がある。いずれのCNT も形状が数nm～数十nm の直径に対して、数μm 以上の長さといった高アスペクトな構造をもつ。CNT は一般に弾性率や長軸方向の引張り強度が大きいなど優れた機械的性質をもつため、プローブ顕微鏡用のカンチレバーの探針として用いられている。また機械的性質だけでなくCNT は、電気伝導性、熱伝導性に対しても優れており、半導体デバイスやガスセンサーなどへの応用に期待されている。本研究は、CNT を用いたカンチレバーやガスセンサーなどの作製に向けて、誘電泳動法によって任意の構造をもつ電極にCNT を操作、配向、修飾させる技術開発を目的としている。誘電泳動法以外にCNT を電極に修飾させる技術としては、基板上のCNT をSEM 観察しながらプローブでピックアップをおこない、1 本ずつ手動制御しながら電極間に付着させる方法や、金属触媒粒子を用いて化学気相成長させる方法などがある。しかし、化学気相成長ではCNT の成長を所定の位置から狙った方向に制御することや、CNT のもつ金属性や半導体性といった電気的性質を分離することは困難である。一方、誘電泳動法はあらかじめ電気的性質が分離された分散液を用いるのに加えて、実験装置およびプロセスが単純かつ容易であるため、将来のCNT を用いたデバイス作製プロセスを低コストで実現できる。