ペンタブレット型弾性表面波皮膚感覚ディスプレイ：ペン型スキャナを用いたテレタッチの検討

摘要

近年，バーチャルリアリティーやロボットなどの遠隔操作等の分野で体性感覚の一つである皮膚感覚の再現の重要性が注目されている．これまでに粗さ感覚を提示するデバイスとして弾性表面波（surface acoustic wave: SAW）皮膚感覚ディスプレイが開発されており，さらにこれを応用したペンタブレット型皮膚感覚ディスプレイが提案されている．また，遠隔地における皮膚感覚の再現としてテレタッチが提案されている．Fig. 1 のようにペンで物体表面をなぞるときの動作を能動的触動作と呼び，本研究ではこの動作とその結果として得られる感覚に着目する．ペンによる物体表面に対する能動的触動作の際，ペンは物体表面の小さな突起と衝突を繰り返すことによって振動し，その振動が指先の神経に伝わる事で感触として知覚される．この動作で得られる感触は物体表面の材質やテクスチャ，ペン先，ペンの材質に応じて異なる．木炭でカンバスに線を描くときに得られる書き味も上記の概念に含める．能動的触動作によるテクスチャに応じた感覚と同様の感覚を，ペンタブレット型皮膚感覚ディスプレイで再現する，つまり，ペンタブレット型皮膚感覚ディスプレイでテレタッチを実現することを目的とする．実装のためには，物体表面に対する能動的触動作の際にペンに生じる振動を電気信号に変換する必要がある．それを遠隔地の皮膚感覚ディスプレイの制御信号に用いる．そこでペンの振動を取得するセンサを取り付けたペン型スキャナを製作し，凹凸面をスキャナでなぞった際のスキャナの振動とセンサ出力を比較し，その有効性を検討した．制御信号の生成に必要な伝達関数の同定において，周波数特性による推定を試みた．