深層学習による浄水処理時のフロック画像からの凝集後濁度予測精度の向上手法の考察

摘要

浄水場における浄水処理において，原水に凝集剤(PAC)を注入し撹拌することで，原水中の懸濁質(そのままでは沈殿しないコロイド粒子)を集塊したフロックと呼ばれる塊を生成する「凝集プロセス」がある．このプロセスにおいて適切な量の凝集剤を注入することは非常に重要である．なぜならフロック形成は凝集剤の多少により良し悪しが決定するからである．一方で日本の浄水場においては近似式を用いて注入量を決定しているが，安全性のために必要量以上に注入している注入過多の状態にあると言われている．確実な凝集剤の注入量の決定にはジャーテストと呼ばれる，原水に対して複数パターンの量の凝集剤を注入しフロックを形成させ，良好な結果が得られるまで繰り返し注入量を追い込む試験が行われる．ジャーテストの様子をfig.1 に示す．これは凝集剤を注入した直後からの時間の経過とフロックの様子を表している．しかし，これは所要時間が長く，さらに熟練技術者の不足の問題がある．そして凝集剤の注入量と形成されるフロックの関係は複雑であり，pH，温度，アルカリ度など様々な要素で変動するため予測が困難であると言われている．