バドミントンシャトルの数値モデリングと飛翔軌道の妥当性検証

摘要

近年，日本国内でバドミントン競技の注目度が増している．2018年に開催された大会では，世界選手権の男子シングルスと女子ダブルスで優勝，トマス杯で準優勝，ユーバー杯で優勝と高い成績を収めている．このバドミントン競技で使用するシャトルは他の球技とは異なり球体ではない．シャトルは16枚の水鳥の羽根と半球状のコルクで作られた円錐形をしている．この独特な形状がバドミントン競技のゲーム性を生み出す1つの要因となっている．シャトルの形状が生み出す運動特性として整列特性と減速特性が挙げられる．シャトルは打ち出されるとインパクト直後に急激に仰角を変化させながら飛翔していく． 次第にこの振動は減衰していき， やがてシャトルの長軸と速度方向は一致する(Caroline, et al., 2015)．この整列特性によりバドミントン競技では多くの場合コルクを打撃することが可能となる．また，スマッシュ時の速度は250～300km/h となるがコート端ではほぼ0km/hとなる(板倉他， 2011)．この高い減速特性はシャトルの羽根付け根部にスリットがあることで引き起こされている(長谷川他，2013)．バドミントンはすべての球技の中で打球の初速が最も速く，400km/h を超えることもある．シャトルの持つ高い減速メカニズムにより初速が増加してもゲーム性を保つことができる．