温度変調DSC の開発と発展

摘要

温度変調DSC は熱分析技術のブレークスルーとして、1990 年代の開発当初1)－3）から注目された測定技術である。従来型のDSC では不可能な測定結果が相次いで発表され、大きな成果を上げた。熱測定討論会をはじめとする研究会等で活発な議論が行われ、世界的に見ても国際会議で特別のテーマとして取り上げられた。装置は従来型DSC と見た目は変わらず、試料作製なども共通であったために、それまでの測定の延長で革新的な研究が可能になるとして、研究や開発に携わる多くの研究者が注目した。しかしながら、得られるデータは従来型DSC とはかなり異なったものであり、基本的な理解が研究者の間で共通なものになったのは、新しい世紀に入った頃であった。温度変調DSC の基礎理論は、現在でも体系的な形にまとめられてはいないが、本講演ではこれまでに蓄積されてきた研究の成果を、できるだけまとまりのある形で紹介したい。講演者は、開発された当初から温度変調DSC に関わり、その後の発展の様子を見ることができた。今回それをお伝えする機会を与えてくださった、熱測定討論会実行委員会の方々に感謝申し上げます。