レーザピーニングによるアルミナ炭化ケイ素複合材の曲げ強度向上

摘要

セラミックスは金属に比べ耐熱性，耐食性，耐摩耗性などに優れた材料である．しかし，脆性材料であり欠陥感受性が高いため，微小な欠陥により強度や信頼性が大幅に低下する．この間題を解決するために，材料開発および表面改質に関する研究が行われている．近年，ショットピーニングにより圧縮残留応力を導入することで，セラミックス材料の表面を高強度化できることが報告されている（1）．本研究では，表面改質手法の一つであるレーザピーニング（LP）に注目した．LPはショットピーニングとは異なり，材料表面に直接投射材が接触しないため，破壊靭性が低いセラミックスに適した表面改質法であるといえる．過去にアルミナ単体に対し，LPを行った結果，圧縮残留応力が導入され，見かけの破壊靭性値が向上することが報告されている（2）．さらに，秋田らは窒化ケイ素単体の曲げ強度をLPにより向上できると報告している（3）．しかし，アルミナ系の複合材に対してLPを適用し曲げ強度の向上を目指した研究はない．そこで，本研究ではアルミナ炭化ケイ素複合材に対して最適なLP条件を検討し，曲げ強度とそのばらつきに対するLPの効果を明らかにした．