CO_2ガスハイドレートの解離膨張特性を利用した試作発電システムの開発

摘要

寒冷地の冬期では，電力需要及び熱需要が膨大であるため，化石燃料の大量消費とそれに起因する温室効果ガスの排出が深刻な問題となっている．そこで，環境負荷とエネルギー問題の解消にあたり，再生可能エネルギー由来のクリーンな発電システムの導入が進められている．本研究では，CO_2ガスハイドレートの特異な状態変化に着目し，化石燃料を使用せず，大気中に排気ガスを排出しないクリーンな発電システムの開発を目指している．この発電システムは，CO_2ハイドレートの特異な状態変化による熱サイクルを，寒冷地冬期における外気の冷熱と，家庭廃熱の温熱を用いて駆動することを想定している．これまでの研究で，CO_2ハイドレートの生成と解離の際に生じる圧力差を利用して発電を行う，ガスハイドレート発電システムの試作装置の開発が行われた．しかし，総合効率2.15%と低く，高圧ガス流体の持つエネルギーを回転エネルギーに変換するアクチュエータでの損失が大きいことが報告されている．そこで，本稿ではCO_2ハイドレート発電システムの高効率化を目的として，アクチュエータ部分に変換効率が高いスクロール式膨張機を採用した試作発電装置の開発及び発電サイクル実験を行い，本システムと類似した，ランキンサイクルである海洋温度差発電の総合効率3%を上回るように改善をはかる．加えて，本稿で使用する熱交換器の熱損失を考慮した総合効率を明らかにしたので報告する．