深さ方向に異なる長さの人工欠陥を導入した高強度鋼の転動疲労特性

摘要

軸受用途を想定した転勤疲労試験では，油浸漬純転がり条件下で行われるため材料内部の非金属介在物を起点に疲労き裂が発生，進展し，フレーキング（はく離）に至ることが知られている．転動疲労に対し長寿命化するために，材料中の主として酸化物を対象に高清浄度化が図られてきたが，近年，硫化物系介在物も転動疲労き裂の起点となること，その長さが寿命に影響することが判明している．本報告では，上記した事象の機構解明のため，硫化物系介在物の圧延方向に伸長した形態を模擬した人工欠陥を導入した試験片を用いて転動疲労試験を行うとともに，欠陥長さを変えてその影響を評価した．さらに，フレーキング前のき裂発生状況をSPring-8のμCTイメージングおよび破面出し後SEM観察によって調査した．そして欠陥をモデル化してFEM解析を行い，力学的な観点から実験結果を考察した．