マイクロサッカードの動的特性と注視視標形状との関係

摘要

視野内の一点を注視する場合であっても，眼球は完全に静止することなく，絶えず微小に運動していることが知られている．このことを固視微動と呼ぶ．固視微動は，一般に，マイクロサッカード，ドリフト，トレマーの三種類に分類されており，近年では，マイクロサッカードと視覚的注意機構との関係に注目が集まっている．マイクロサッカード制御系は，注意のような認知機構の影響下にあると同時に，注視視標の形状のような外因的要因によっても影響されることが知られており，注視視標の形状によってマイクロサッカード発生頻度が変化するとされ，注視のしやすさがマイクロサッカードの発生に関与するとも考えられる．しかしながら，マイクロサッカードの振幅や速度といった動的特性については詳細に分析されていない．そこで本研究では，注視視標の形状とマイクロサッカードの基本的特性の関係を明らかにすることを目的に，点，円，十字を組み合わせた計7種類の注視視標に対して，それぞれ10秒間だけ注視させる実験を実施した．このとき計測された固視微動データからマイクロサッカードを抽出し，各視標に対する発生頻度，最高速度，持続時間，振幅を算出し，これらの特徴量を定量的に比較した．