位相干渉に基づく距離推定法を利用した超音波による体組織境界判別の基礎的検討

摘要

そこで，本研究では，超音波を利用したAモードによる皮下脂肪厚や筋肉厚などの体組織を計測することを目的とし，体組織の境界判別を行う．Aモードでの計測はBモードでの計測とは異なり，波形から皮下脂肪と筋肉など組織の境界を判別するのが難しく，何らかの方法で境界判別が必要となる．マイクロ波レーダの分野において，送信波と反射波の位相干渉を利用した近距離計測法が知られている[5]．本手法はパルスエコー法のように反射を直接的に用いる方法とは異なる．パルスエコー法は短い幅のパルスを送信波として使用することによって，距離分解能を上げると同時に，反射波が送信波に埋もれてしまうことを防いでいる．それに対し，位相干渉を利用した近距離計測法では，送信波と反射波の位相干渉によって生じる定在波を利用している．われわれは，位相干渉を利用した近距離計測法を超音波画像装置へ応用し，超音波を送信波として用いて固体中に埋められた対象物に対して距離推定実験を行い，距離計測可能であることを確認した[6]．本手法は，距離推定の計算過程において対象物の反射係数に関する情報が含まれており，この情報を抽出できれば，対象物の境界判別が可能である．