溶射プロセスに適応した改良型ステンレス鋼皮膜の耐食性と耐摩耗性に及ぼす熱処理の影響

摘要

溶射におけるステンレス鋼の酸化問題に対して，筆者らは，合金設計の観点より解決方法を検討している．これまでの研究結果から，脱酸元素Si，B及びCの添加は大気プラズマ溶射におけるステンレス鋼中のCr，Niの酸化抑制に大きな効果があった．またNb，V，Tiのような微細な炭·ホウ化物形成元素の添加により耐食性の改善と硬度の上昇の相乗効果が確認された．これらの皮膜のほとhどは準安定なアモルファス，また微細結晶粒の組織構造である．熱処理を施すことにより平衡·安定な組織の中に微細な炭·ホウ化物が析出し，硬度を更に向上させると考えられるが，耐食性の低下が懸念される．本報告は，前報での7種類の設計合金の中で，耐食性の最も優れたTi添加のNo.2皮膜，とNb，V及びCu添加のNo.7皮膜を用いて，皮膜硬さと耐食性に及ぼす熱処理の影響を調べた．