立体培養法による組織微小環境モデルの開発および疾患研究への応用

摘要

細胞培養実験は、動物実験とともに、疾患生物学研究の基本をなす実験的アプローチである。特に、患者由来あるいは疾患モデル動物由来の細胞を利用した培養実験は、分子細胞生物学の隆盛とともに、多くの疾患に関する我々の理解の深化に大きく貢献した。従来の細胞培養実験においては、通常、細胞はプラスチックやガラス製の培養基材上で平面的に培養されていた。しかし、平面培養系では、生体内において細胞が置かれている微小環境を十分に模倣することができない。たとえば、細胞外基質（extracellular matrix:ECM）構築や、細胞の足場の硬さ、組織構築、細胞極性などがそうした微小環境要因の例として挙げられる。これらを含む各種微小環境要因が、細胞の挙動·形質に多大な影響を及ぼすことが近年の研究により明らかになってきた。ゆえに、こうした微小環境要因を模することができる新たな培養技術の確立が必要となる。本講演では、我々の取り組hでいる膵がh研究を例に、平面培養系では模倣できない微小環境要因について考察することから始める。そして、立体培養技術を組織微小環境のモデル化、さらには病態解析にどのように活用できるかについて紹介する。