走查プローブ顕微鏡による生体キプリス幼生の一時付着力の測定と飼育環境依存性

摘要

フジッボは付着汚染生物として知られ、船舶、魚網、発電所冷却水路系など様々な海洋構造物に付着、固化することで深刻な問題を引き起こす。成体フジッボをはがすことは技術的に困難であり、多額の費用と時間を要する。そのため、フジッボ変態前のキプリス幼生の付着を防ぐ物質や表面構造の探索が盛hに研究されている。また、最近では接着タンパクの構造解析も進み、これを分子模倣した水中接着剤も検討されている。海水中で一時付着する生体キプリス幼生の付着力を初めて実測したのCrispらであり、付着力に季節依存性があることを報告している。しかし、Cahn電子天枰に幼生を固定するのは高度な技術が必要で、1983年以降報告例はない。最近、本研究室では走查プローブ顕微鏡(SPM)のカンチレバーに活動中のァカフジッボキプリス幼生を固定し、触角先端の付着器と基板表面との付着力を測定する手法を確立した。これにより、日齢により付着力が変動することや、双性イオン型ポリマーブラシ表面への付着力は極めて弱いことを見出している。今回は、幼生を異なる塩分濃度の海水中で保管した場合、付着力にどのような影響が現れるのかを検討した。