反強磁性スピントロニクスに向けたノンコリニア反強磁性絶縁体SmFeO_3 トンネル接合の作製と評価

摘要

反強磁性体は、漏洩磁場が発生せず、スピンの応答速度が非常に速く、THz 領域までの高周波応答が可能、という特性から、次世代の超高積層?超高速スピントロニクス素子への応用が期待されている。そこで反強磁性体のスピン検出が一つの課題となっている。この問題を解決するための一つの案は、トンネル伝導電子を用いた磁気抵抗効果(MR)、すなわちトンネル接合の異なる抵抗値からスピンの検出である。反強磁性絶縁体SmFeO_3 は、同一直線上に配列し、互いに打ち消し合うはずだった磁気モーメントが、スピン軌道相互作用によって自発キャントしたノンコリニア反強磁性体(ネール温度 TN ～ 670K)であり、局在的なスピン偏極、マルチフェロイック特性を示すことが明らかになっており、TAMR(トンネル異方性)、NCMR(ノンコリニア)、TER(トンネル電界誘起)等への応用が期待される。そこで本研究では反強磁性スピントロニクスに向けたノンコリニア反強磁性絶縁体SmFeO_3 を用いたトンネル素子での磁気応答を目指した。