浮力を失う高度より高い高度に達した積乱雲の雲頂の雲(オーバーシュート)は、対流圏と成層圏の間の水蒸気やエアロゾルを輸送する役割があると考えられている。しかし、その直接観測は大変危険なため、リモートセンシングを用いた観測に頼るしかない。地上からの観測では、積乱雲を下から見上げて測定するため、光や電波の減衰のためオーバーシュートを観測することは困難である。日本には成層圏まで到達できる観測用航空機がないため、航空機観測も困難である。このため、オーバーシュート研究は、もっぱら数値実験と衛星観測のデータ解析が行われてきた。ただし、衛星といっても、MTSATのようなパッシブセンサでは、単に高い雲なのかオーバーシュートをしているのか区別することができないので、オーバーシュート観測にはアクティブセンサを用いる必要がある。例えば、Iwasaki et al.(2010,2012)では、同軌道に衛星を列車のように連ねてほぼ同時刻に測定するA-trainの衛星搭載雲レーダ(CloudSat)·ライダ(CALIOP)·イメジャ(MODIS)·サウンダ(AIRS)と客観解析データ(ECMWF)による同期オーバーシュート観測·解析を行い、オーバーシュートに含まれる雲水量、オーバーシュートの出現頻度や統計的な性質を調べ、オーバーシュートは成層圏を加湿する可能性が高いことを示した。本研究では、オーバーシュート後に残ったと思われる成層圏の巻雲について考察する。
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