適応的スペクトル圧縮法に基づくデジタル補聴処理の検討

摘要

軽度から中度の聴力損失を対象としたデジタル補聴処理として，多帯域圧縮や広帯域圧縮（クレイダ等）のスペクトル圧縮処理が用いられる．しかしこれらの処理では，帯域内平均レベル群や一定間隔の周波数標本群をもとに圧縮特性を決定するために，スペクトル全体の圧縮増幅により，音声知覚に有効な高レベルのホルマント成分が平坦化されてしまう傾向がある．そこで，我々は音声に特化した補聴方式としてIFC 法で抽出したホルマント周波数を用いて，原音声スペクトル概形を維持しながらホルマント帯域を選択的に可聴域に圧縮増幅するホルマント分解型補聴方式を提案した．本稿では，この高レベル帯域の選択的圧縮の考え方を非音声にまで拡張した適応的スペクトル圧縮方式の提案を行う．