内側オリーブ蝸牛束反射に対する音楽経験の差：専攻楽器の別と聴力レベルの相関

摘要

蝸牛外有毛細胞の能動性は聴覚系の応答に非線形性をもたらす大きな要因として働いており，低い音圧レベルの音響信号を増幅することで好感度かつ広いダイナミックレンジを持つという利点をもたらしている。耳音響反射はその能動性の産物として観察され，他覚的かつ非侵襲的な測定法としても利用されてきている。この外有毛細胞に対しては上オリーブ核から内側のオリーブ蝸牛束を経由した遠心性の神経交絡があり，上位からのフィードバックによって能動性自体が変化し，それは内側オリーブ蝸牛反射(Medial Olivocochlear Reflex;以下 MOCR)と呼ばれている。典型的な観察では，クリック誘発耳音響反射(Click EvokedOtoacoustic Emission; CEOAE)のレベルが対側耳に広帯域雑音を呈示することによって低下することによってMOCRの存在が確認できる。上オリーブ核からの交絡には対側側の経路に合わせて同側の経路も存在する。このような同側性のMOCRについても雑音をクリックの直前に入れる順向マスキング?パラダイムを用いることで確認できる。