表皮における顆粒層の安定化とタイトジャンクション形成の数理モデリング

摘要

皮膚は大きく分けて表皮,真皮，皮下組織で構成されている.その中でも最も外側にある表皮はその大部分が角化細胞から形成されており，基底層，有棘層，顆粒層，角層からなる層構造をとっている.角化細胞については，表皮最下層である基底層における基底細胞から始まり，有棘細胞,顆粒細胞と分化し，最終分化によって角質細胞となって最後に垢となって剥がれ落ちるターンオーバーが繰り返されており，人間のターンオーバーの平均は約4 5日と言われている[5].特に顆粒層は細胞が角層へと最終分化に進む過程にある層であり，生きている細胞から死hだ細胞への変わり目となる層でもある.その構造はおよそ3層の細胞から成り，表面から順にSG1,SG2, SG3と呼ばれている.その中でSG2層の細胞間にのみタイトジャンクション（密着結合）という，細胞間を密着させて細胞と細胞の隙間を狭めることで物質の通過の制限やイオン透過の制御を行う機能が存在しており，角層と共に重要な皮膚のバリア機能を担っている.本研究では，表皮構造の数理モデルにおける顆粒層とタイトジャンクションの安定形成への取り組みを通してそのメカニズムについて考察していく.また,角層での接着分子の分解酵素に注目した角層剥離の数理モデリングの取り組みについても紹介する.